sexy voice
『智也・・・愛してるよ・・・』
俺は携帯をギュッと握り締めた。
握り締めた手が振るえているのがわかるほどに携帯が揺れていた。
電話の向こうから腰が抜けそうなほどの声が聞こえてきたからだ。
相手は男で俺も男だ。
「お前なぁ・・・いつもいつもふざけた電話かけてくるな!」
電話の相手に怒鳴った。
『いいじゃん。面白いしv』
愛してるよ・・・なんて色っぽい声で囁かれることのどこが面白いんだ!?
「そんなセリフは彼女作って、その子に言ってやれ!」
まったく、夜中に迷惑な話だ。
この非常識な友人・雅弘はルックス良し、声は男女ともにメロメロにさせるほど良い。
つまりモテルのだ。
その声で愛を囁いて落ちなかった奴はいないらしい。
しかし俺には効かなかったとかで俺に興味を持って、まとわりついている。
迷惑な話だ。
折角天から与えてもらった才能を持っているのに彼女はいない。
ちなみに言うと彼氏もいない。
言い寄ってくる奴はたくさんいるのだが全て断っているらしい。
もったいない。
俺が雅弘だったら美女と付き合うのにと思う。
まぁ、そんなことを言っても仕方のないことだが。
俺は軽くため息をついた。
もてない俺としては羨ましい限りだ。
そんな思いをため息をつくことで外に吐き出した。
「もう寝るから切るぞ。」
雅弘と電話をしていると一日の疲れが増す気がする。
早く寝て疲れを取ろうとそう言った。
『わかった。おやすみ〜。』
雅弘の疲れが見えない明るい声に返事をして電話を切ると深い眠りに就いた。
翌日のこと。
今日は土曜日で学校は休み。
部活に入ってないし、友達とも約束していない俺としては予定は何もなく、優雅な一日(と言っても寝ることだが)を過ごすはずだった。
《ピンポーン》
俺の予定を狂わす悪魔の鐘が俺の家中に響いた。
両親ともに今日は出かけていていない。
(だからゆっくりと寝て過ごすつもりだったのだが・・・)
仕方なくベッドから這い出すと玄関へと向かった。
そこには満面笑顔の見慣れた顔があった。
「雅弘?」
遊ぶ約束はしていなかったはずだと頭の中で記憶を探るがやはり記憶にない。
なのに何故ここにいるのだろうと首を傾げた。
それをわかってか雅弘はココに来た理由を簡潔に述べた。
「遊びに来たv」
そう、簡潔すぎるほどに簡潔に・・・。
爽やかさもプラスされて俺をイラつかせた。
「遊びにきただと?生憎そんな約束はしてないはずだ。早急に帰れ。」
命令口調で言ってやるが怯んだ様子はなさそうで家の中に入り込んできた。
「ちょっ、待て。勝手に家に入るな!」
いくら仲の良い友達っていってもこれは図々しすぎるだろ!?
「今日は智也ん家誰もいないって聞いたから襲いにきちゃったv」
雅弘はおどけて言った。
確かに以前そんなことを言った気がするが襲いに来たってなんだよ?
こいつの言動は時々意味不明でイライラする。
「お前帰れ!今日は寝て過ごすつもりなんだ。邪魔すんな!」
玄関から家の外を指差して外に出るように促した。
しかし一向に人の話を聞かずむしろ靴を脱いで家の中にあがりこんだ。
「雅弘!?」
「若者が一日中寝てると脳みそ腐るぞ。」
悪戯っぽく笑って言った。
「お前とは違う。」
仕方ないと諦めて雅弘の後を付いて俺の部屋に向かった。
「それって俺の頭が腐ってるってこと?」
「違うのか?」
雅弘はそんなぁ〜とがっかりした感じに言いつつも顔では笑っている。
「で、今日は何して遊ぶつもりだよ?」
TVゲームか?どっか買い物に行くのか?といくつか例を挙げる。
しかし雅弘はどれも首を振った。
「じゃあ何するんだよ?」
「さっき言ったろ?襲いに来たって。」
いつもの冗談だと思って聞き流した言葉を再度耳にした。
「おまえ、そんな冗談言って楽しいか?俺は鳥肌が立ちそうだぞ。」
そう言って腕を擦る真似をした。
「冗談じゃないぞ。本気だ。」
本気とも思えないにこやかな顔で言われる。
俺は呆れてため息をつくと、どうせ何か行動するならとパジャマから着替えようとタンスに向かった。
「着替えなくてもいいぞ。」
着替えようとしているのに気づいて雅弘は俺にそう言った。
「パジャマのままだと何もできないだろうが。」
例え家の中にずっといるにしてもパジャマだと締まりがない。
一緒にいるのが気心の知れた友達だったとしても・・・だ。
「どうせ裸になるんだし着ても意味ないだろ。」
「は?」
こいつはまた何を言ってくれちゃってるのだろうか?
「言ったろ?襲いに来た。本気だって。」
本当の本当にそんなことを思ってココに来たのだろうか?
冗談にしてもこんなにしつこいと性質が悪い。
なんて答えていいのかわからず黙っていると雅弘は珍しくため息を吐いた。
「おまえ、全く信じてなかったんだろ?いつも言ってるだろ・・・」
ゆっくりと俺に近づくと俺の耳元で囁いた。
「『愛してる』って。」
さっきは真似だった鳥肌が一気に立った。
「大人しく俺に抱かれろ。」
さすが、男女問わず落とすことができる声。
いつもは平気だが、いつもとは状況が違うからか、やばいと思ってしまった。
「誰がお前なんかに抱かせるか!ふざけたことばっか言ってると友達やめるぞ!」
肩を反対方向に押しやってそう言った。
意外と呆気なく離れていき、雅弘の真剣な顔が見えた。
「俺はおまえと友達になりたいんじゃない。恋人になりたいんだ。」
「なん・・・だと。」
ココまで来るとやはり本当のことだったのだと認めざるを得ない。
だけど信じたくなかった。
友達でいたかった。
「俺は・・・お前とは友達でいたい。」
「・・・残念だがもう、友達に戻ることはできないよ。今から俺のものだ。」
傲慢で、でもどこか切実な声だった。
雅弘の顔からも痛切な思いが伝わってくる。
「嫌だ・・・誰がお前のものになんてなるか!」
雅弘と恋仲になってしまえば今の関係が崩れていきそうで怖かった。
そしてこの場から去ろうと踵を返し部屋の扉に手を掛けた。
「智也・・・。」
背後から扉を開けようとした智也の手を包むように押さえた。
「離せ・・・!!」
怖いと思った。
何がなんて説明はできないけど雅弘が誰か知らない人のように思えた。
「・・・俺が嫌いか?」
後ろから抱きしめられた状態でそう聞かれた。
首を振って雅弘の問いに答えた。
「じゃあなんで逃げようとするんだ?」
「・・・怖い。」
「怖い?・・・俺が怖いのか?」
再び首を振って雅弘の問いに答える。
「おまえとそんな仲になったら何かが変わってしまいそうで怖い。」
そう言った後、しばしの沈黙が流れた。
雅弘は何か考えているようだった。
後ろから抱きしめられている状態では雅弘の様子が見えず不安に思う。
様子を伺おうと後ろを向こうとしたときだった。
「なぁ、お前は俺達の仲が変わることが不安なんだよな?」
雅弘の言いたいことがわからないながらも「あぁ。」と答えた。
「俺が嫌いってわけじゃないんだよな?」
「!?」
雅広が言いたいことがわかった気がする。
「智也も俺のことが好きだってことだよな!」
雅弘は今までは疑問系で言っていたが最後は確信を持って言った。
「ちがっ・・・」
「だいじょーぶ。今までの俺とお前の仲は変わんねぇよ。さらに良くなるだけだ。」
すっかり自分の世界に入ってしまった雅弘には何を言っても意味がなかった。
「俺が智也のこと大事にしてやるからなv」
そう甘く囁かれて、いつかきっと完璧に雅弘に落とされる日が来るのだろうなと思い深くため息をついた。
やはり誰もこのsexy voiceには勝てないらしい。
END
パソコンにアップされてるものはだいたいがワープロやノートに書いたものを
パソコンにちょっと修正しながら書き写してるんですが、これが一番修正されまくりの作品だと思います。(汗)
毎回終わりが同じにならないようにと思うんですが、いつも似た感じで終わってしまいます・・・。
誰か私に文才を下さい・・・(泣)精進します。
ここまで読んでくださった方。本当にありがとうございますvvv
未熟な作品しか書けない未熟者ですがこれかもよろしくお願いします☆
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06'